美容師の友達

友達に1人美容師がいる。
高校は違う学校だったから進路は知らなかったが、狭い街なので、風の噂で美容師になったと回って来た。
大学生だった自分は切ってもらおうと連絡してみた。

彼は喜んで受けてくれた。
場所は私の自宅で、夜遅く、仕事が終わってから切りに来てくれるらしい。
友達に髪を切ってもらうと言うと、無料でやってもらえるような気がするが、彼は兄と一緒に働いていて、兄がそういうことにうるさいので無料では切れないと申し訳なさそうに言ってきた。
私はタダでやってくれる期待感もあったものの、昔からの友達だし、元々お金を払わなければやってもらえないことなので、もちろんOKと返事をした。
当日、髪を洗って待っていると、大人の顔になった友達がいた。
腰には沢山のハサミをぶら下げ、細身で雰囲気も美容師然としており格好良かった。
そうだ。
昔から格好良かったよなあと思い出しながら、少し話をして早速カット作業に入ってもらった。
幸い自宅の洗面台は広く、鏡も壁に張り付いた大きなものだったので作業にはそこまで困らなかっただろう。
思い出話をしながら、友達に髪を切ってもらうなんてなんだか感慨深いなあと大人になった自分を感じていた。
慣れない場所だということもあったし、仕事ではないので結構時間を使った。
楽しい時間だったから時間が過ぎて行くのはあっという間だったが、もう夜の12時を回ろうとしていた。
期待していたカットは、それほど自分の好みではなかったけど、その後午前3時頃まで彼との会話を楽しんだ。
今では新しい店で働いているというが、土地を離れてしまったため会いに行けていない。
また切ってくれるかなあ。

美容室で働いていた頃のこと

私はこれまで、複数回転職をしてきました。
今は事務の仕事をしていますが、以前は美容室で働いていたこともあります。
美容学校を卒業していない私には、全く無縁の世界でしたが、美容には興味があったので、美容室で受付の業務をしたいと思い、入社しました。
以下、私が美容室で働いていた頃のお話です。

私が入社した美容室は、全国に何店か出店しているチェーン店で、家から車で20分程度のショッピングセンター内にありました。
従業員は私を含む10名ほどで、内受付が私1人、見習いが5人でした。
営業時間はショッピングセンターと同じく、朝10時開店の夜10時閉店です。
初めは早番・遅番の交代制だろうと思っていたのですが、実は1日通しての業務でした。
毎日長時間立ちっぱなしで、足はパンパンです。
しかしお店の方針から、8時にはお店を閉めて良いとの事で、特に予約などなければ、毎日9時ごろには帰宅できました。
休みは毎週2日あるのですが、その日に研修が入ることもしばしばで、毎日くたくたに疲れ切っていました。

美容師間は上下関係が厳しく、また、いかに多くの指名を取るか、売り上げを上げられるかで、毎日ピリピリしていました。
アシスタントも先輩の足を引っ張らないよう一生懸命でしたが、厳しい指導から、泣いている姿をよく目にしました。
私の働いていた美容室は、ポイントによって給料が変わり、時間のかかる作業をしたり、商品を売ったりするとポイントがつき、給料が上がります。
またそのポイントにはノルマがあり、ノルマに満たない分は、自分で商品を買い取るしかありませんでした。

入社後3か月間が試用期間なのですが、私はその試用期間を終えた時、自分から退色しました。
毎日夢にまで仕事内容が出てくるようになり、常に休んだ心地がしなくなってしまったからです。
このままでは体調も精神もおかしくなると思い、退社しました。
自分の興味のある仕事ならやっていけるだろうと考えていたのですが、その考えは甘く、また改めて美容業界で生き抜くことの厳しさを知りました。
好きな仕事をして、毎日幸福な生活を送れている人は、ほんの一握りなんだなぁと思いました。
また、そのように毎日大変な仕事をしている人達がいるから、私たちが快適に生活できているという事を忘れないようにしたいです。

«
»