父親のメール

私の父は頭がいい。
私は父がいい大学に行ったということもあって、その大学を目指そうと思った。
結果として浪人してしまった私と、入った学部を変更するためにもう一度受験した父とは勉強の出来は全然違うだろう。

父はことあるごとに私に準備を促す。
あれをやったか、用意したかと執拗に聞いてくる。
必要以上の確認に嫌気がさし、私は準備することが億劫になる。
父としてはきちんと準備した方が実際の行動に入ったときにうまくいくということは、勉強でも仕事でも自分の人生で実証してきたのだろう。
だから、子の私にも同様に失敗のないよう何度も確認してくるのだ。
しかし父は知らないのだ。
自分以外の人間を動かすときにどのように声をかけるのが一番効果的なのかを。
私も母も父のそういうところを本人に直接非難するのだが、本人はずっとそういう「真面目」な人生を歩んで来た人だから、うまく相手を乗せたり、行動させるために騙すというようなことをできない。
私は思春期の時、父の真面目な部分を嫌い、話もしなかったが、今では家族を支えてくれたことに心から感謝している。
そして、第一線の仕事から離れた父も最近は物腰が柔らかくなってきたように思う。
父も母も高齢になったし、私も歳をとった。
今では離れて暮らしていることもあって、お互いの悪い面より良い面が頭に浮かび、メールでは今までできなかったような相手を思いやる内容の話をしている。
しかし、父のメールの文面はやはりビジネス上のやり取りのようで、逆におかしくて笑ってしまう。
私としては父に対してそこまで仕事人間という印象もないのだが、大学を卒業してからずっと働き続けてきたということはそういうことなのだろう。

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