健康第一

「健康第一」は言わずと知れた日本の代表的4文字熟語だろう。
幼いころ、運動会に祖父母が遠方から来てくれ、2、3に宿泊して帰って行く時に「健康に気を付けてがんばるんだよ」「健康第一でね」と言ったことばを残してくれた。
言っている意味はわかったが、あまりパッとしなかったのだ。

「なんでそんな当たり前のことを言うのかなあ」と考えていたように思う。
「健康に暮らす」ということは当たり前過ぎて、わざわざ別れ際にことばにすることが理解できなかったのだ。
無理もない。
生まれたときから身体が大きく、10年にも満たない時間の中でずっと健康優良児として育ち、親からも身体が強いというようなことをことあるごとに聞かされていたのだ。
自分は健康だということを意識すらしなかったし、病気になるということが想像できなかった。
しばらくして私は病気になる。
それは家族全員を巻き込んだ壮絶なもので、学校に行けるか行けないか毎日悩み苦しんでしまうくらいだった。
今ではそこまで重いものではなくなったが、完全に病気は消えたわけではない。
常に意識としてあり、完全に生活の一部になっている。
一度病気をしたことで、やっとあの頃のことばが理解できた。
病気になってしまうと、普通のことができなくなってしまう。
普通のことというのは、「ただ生活する」ということだ。
ただ生活することがこんなに嬉しいことなのかと、最近になって思えるようになったと同時に祖父母が言っていた「健康第一」ということの意味がようやく理解できた。
また、テレビで「お笑い」を仕事にしているような人が「健康が一番」などと言っていると、この人いつも笑っているけど、本当は大変だったのかなと思うようになった。

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