もうやらない仕事

私が二度とやらないと決めているアルバイトは引越屋である。
今回書く内容はよくある話かもしれないが、実体験として本当にその「よくある話」のようなことが起こるとは私も思っていなかったのだ。
アルバイトと書いたが、実際の契約体系は少し違ったように思う。

正社員とアルバイトの中間のような名のものだった。
引越業者の朝は早い。
朝7時には全員集合し、着替えを済ませ、朝礼が始まる。
それから9時に予定が入っているお客さんの元へトラックを走らせて向かい、早めに着いて待機するという寸法だ。
その朝の一時からしておかしいと私は思った。
必ずコンビニに立ち寄り、予定のお宅に向かう前に朝食を採るのだ。
まあ朝食を採るのはいいが、家で作ってくるとか前の日に買っておくとかいう考えは彼らにはないようだ。
私は食べてきていたので、その時間は無駄だった。
そしてお客さんのところに着けば、時間よりかなり早くても電話をかけ、出なければ非難するように文句を言う。
これから共に作業する人であり、何よりお客さんであるのにも関わらず、自分の思ったようにならなければ不平不満を漏らす、そんなことが多かった。
私もここで彼らを糾弾してもしょうがないのであるが、幾度となく浴びせられた理不尽なことばは私には理解できなかった。
ある日、私は熱中症で仕事中に倒れてしまった。
水分や塩分対策はできる限りしていたが、結局2日間入院するはめになった。
その時に言われたのは、心配することばなどではなく、作業を止めたことについて謝れというものだった。
確かに仕事中に倒れることは迷惑だっただろうが、そんな言い方をする人間と働くことはできないと、数日後に辞めることにその時決めた。
今では笑い話で人に話してはいるが、私は二度とこの仕事をやることはないだろう。

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