雑学の本
図書館で受験勉強をしている時に再会した中学校の同級生に一度は冷たい態度を取ってしまったが、大学でまた出逢いそれからは将来のことを真剣に語り合う仲になった。
彼は社会の先生として教育実習に行っているようだった。
私は主に物理を勉強していて感じたこと、ものを考えるということについてわかってきたことをテーマにして話し、彼は人生の生き方や人にものを教えるということについて話してくれた。
彼は中学生の時、成績はあまり良い方ではなかったが、大学生になった彼は話しやすいし、深く考えているし、何よりセールスマンのようなトークのうまさで人間的な魅力に溢れる頭のいい人だと感じた。
彼が突然家に車で迎えに来てくれて、遠くの街までドライブがてら美味しいものを食べに行ったこともあるし、同い年なのに塾講師で稼いでいるお金があるからと奢ってくれたこともあった。
お互いにお互いのことを人間として好きなタイプだったと思う。
ある日、彼が教育実習のことについて怒りながら話してくれたことがあった。
社会の先生として母校の生徒に授業しに行くわけだが、その学校の社会科担当の先生は上司的な位置づけになるらしい。
それで、アドバイスなり授業の進め方を教えてくれるらしいのだが、言われたことが気に食わないと言っていた。
私もそれはどうなんだと共感した内容だったのだが、「社会科っていうのは雑学が大事だ」と言ったらしい。
ここまではいいだろう。
しかし「雑学の本貸すから、これ読んで勉強して」と言われたのだった。
これは流石におかしい。
雑学っていうのは、勉強するようなものではなくて、人生を生きてきた中で自ら観察したり発見したり、親や友達から教えてもらったことで成り立っているものだと思う。
それを、「雑学の本」みたいなもので勉強しろと言ってくる社会科教師がいるとは信じられなかった。